美女と野獣
ときどき、夫を見つめながら思う。
実はこの人には悪い魔法がかかっていて、何かの拍子に魔法が解けたら美しい王子で、何不自由ない暮らしが出来たりなんかして・・・。
そんな妄想を妻が持っていることは、ナイショだ。
魔法がかかって、王子が醜い姿に変えられている、というお話しで思い出されるのは「美女と野獣」という物語。
簡単に要約すると・・・。
あるところに四人姉妹がおりました。
父の旅の土産に、三人の姉は高価なものをねだりましたが、末娘が願ったものは「白いバラ」。
父は知らずに野獣の庭から白いバラを持ち帰りました。
野獣は罰として父に三ヵ月後に来るように、と言いましたが、その身代わりに野獣のお城に行ったのは末娘でした。
野獣は娘に何不自由ない暮らしを与え、しきりに求婚しました。
娘はその求婚に応じませんでした。
ある日、娘は父が病気であることを知り、一週間で帰ると言って父の元へ戻りました。野獣は「もし私を見捨てたら、私は死ぬだろう」と言っていましたが、妹が何不自由ない暮らしをしていることを妬んだ姉たちは約束の日が過ぎてもお城へ帰してくれません。
娘は野獣が死んでいく姿を夢で見、彼を生き返らせるためにお城へ戻ります。
死に瀕した野獣を見たとき、娘は恋に落ちていたことを悟り、野獣の求婚を受け入れます。
すると野獣は消え、美しい王子が現れます。
見かけではない、その心の善良さに惹かれる女性が現れるまで解けない魔女の魔法にかかっていたのでした。
今日はこの物語について読み解いてみたいと思います。
このお話の中で印象的なのは何といっても「白いバラ」。
姉たちが高価なものをねだったのに、末娘は「花」で心の充足を願います。
このバラは、娘の清らかさを現していると同時に、姉たちと対比させて「見せかけではない」ものを欲しているという象徴に読み取れます。
野獣の城で暮らすようになっても、娘はまだ自分が本当に欲しているものに気が付いていません。
父が病気になり、父の元へ戻ったとき野獣を見捨てることも出来たはず。
野獣を想って城へ帰っていくとき、既に娘は父からも精神的に独立した大人の女性へと成長していたのです。
こうした親からの精神的な独立も、結婚には必要なイニシエーションです。
そして、恋には恐ろしい魔女の魔法も解くほどの力を持っているのですね。
そう、それは直感の中にあって、見かけの美しさに左右されることはないのです。
さて、似たようなおとぎ話に「カエルの王様」というのもありましたっけ。
カエルの王様は、お姫様に投げつけられて魔法が解けるんでしたよね・・・。
あ、そこの方、いけませんよ。あなたの愛する人で試してみては・・・。
参考文献:『女性の心の成熟』(玉谷直美著・1985年・創元社)