満月のお正月
今年のお正月の三日は美しい満月でした。帰省ラッシュを潜り抜け、夫と二人で暮らす街に戻り、ほっとしながら見上げた空に浮かぶ満月を見て、ふと昔の人の風習を思いだしました。
このページを読んでいらっしゃる方は、娘として過ごす最後のお正月を、そして結婚して初めて嫁として過ごすお正月を迎えられた方が多いのではないでしょうか。
嫁入り先でも作れるようお母様のおせちを習い、結婚した方は家の風習をお義母様から習って年越しを迎えた方もいらっしゃるでしょう。
おせちといえば、新年の初めくらいは女性も台所仕事をせずとも過ごせるように、と作られてきたもの、と聞きます。しかし、お正月に休むためとはいっても、年の瀬に母や祖母が普段の倍以上台所に立ち、何時間もかけて黒豆を煮たり、手間をかけてキントンを作ったりしているのを見ていると、子供心に矛盾を感じずにはいられませんでした。
実際、母たちはお正月を迎えても何もしないわけにはいかず、朝は暖かい雑煮を作り、子どもたちは苦手なおせちには愛想程度にしか手をつけないからまた料理をしなくてはならず、女性がゆっくりとしているお正月の情景は我が家を思い出す限り浮かばないのです。
そんな実際目にする習慣と、耳から聞く習慣の差の不思議は、少し前の時代のものと現在のものとが混在していることにあるようです。
御節(おせち)、と漢字で書くとおせちが区切りの日、節句と関係があることがわかります。一月一日、三月三日、五月五日、七月七日、九月九日、これを五節句といいます。(九月九日はあまり馴染みがありませんが、菊の節句です。)
特に、歳神様をお迎えするお正月には、火を使うのを慎みつつ、神様と一緒にご馳走をいただく、という慣わしがありました。だから年末に豪華な料理を作り置きして、なるべく火を使わずお正月を過ごす、という習慣になったのだそうです。
昔はお正月には、その家の家長か長男が朝早く起きて井戸へ行って水を汲んできます。これを若水汲みといいました。その清らかな水を使って、お雑煮もお茶汲みもその男性がしてくれた、というのですから、三が日、女性は楽ができた、と言われたのでしょう。
とは言いつつも、実際には女性が寝て暮せたわけではなくて、年始客の対応などで忙しく、本当にゆっくり出来たのはお正月が過ぎて、15日くらいからだったそうです。その頃を「小正月」とも「女の正月」とも言いました。お嫁さんは実家に戻り、しばしの休息を得たのでした。
昔の暦でいうと、今年の小正月は三月四日にあたります。今より少し風も水も温んで、春の訪れを感じつつ実家に戻るその頃は、嫁いだばかりのお嫁さんには嬉しい日であったことでしょう。
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